les feuilles

ルボア卒業生AMPP認定マスター/メディカル・フィトテラピストによるフィトテラピーな毎日

置き換える知恵と工夫「スパイス活用術~シナモン~」

f:id:lebois_medi02:20170905004729j:plain

はじめに

「Phyto(植物) therapie(療法)」の3つ手段。それは、「香る(芳香浴)」「塗る(けい皮吸収)」「飲む・食べる(経口摂取) 」です。どれも、日常の行動の一部であり、フィトテラピーは特別なものではなく、生活の中に溶け込んでいるものだと考えています。その中でも、「飲む・食べる」ことは、毎日私たちが楽しみ繰り返す生きるための習慣です。日に数回いただくお食事や間食に、いただくものやいただき方をちょっと工夫をすることで、日頃の不調の解消ができるとしたら 毎日が薔薇色になるのだ!!・・・は、言い過ぎとしても、不調の連鎖をどこかで断ち切ることができれば、QOL(生活の質)は、明らかに向上します。そんな気持ちもあり、私のカウンセリングセミナーでは、「置き換える知恵と工夫」を提案していくことにしています。

習慣をガラっと変えることは難しいけれど、毎日食べることだから、
・飲むものや調味料を変える
・薬や基礎化粧品を変える
・睡眠の質や心の持ち方を変える
このあたりが、比較的習慣にしやすいのではと思い、実践あるのみのフィトテラピー実践講座講座を開催しています。「飲むものや調味料を変える」ということの中で、スパイスに関心があるが、なかなかうまく活用できないという方も多いのではないでしょうか?そんなこんなで、第二回目のスパイス活用術のレッスン、今回は、スパイス調合家・料理家の先生、スパイス活用のプロとコラボして講座をいたしました。
先生とご相談しはじめたのが、昨年末。年明け早々にお会いして具体的な準備に取りかかりました。今年は、「植物をひとつひとつ丁寧にお伝えしていきたい。」それが、2017年の年頭に掲げたテーマです。実践するお客様の立場に立って考えると、その方が、的が絞れて楽しく、習慣化しやすいのではないか?と。

ご相談を繰り返し、新刊本のテーマである「シナモン」に決定しました。お互いの予定を調整した結果、時期も、少し、肌寒くなる9月になり、タイミングとしてとてもよかったと思います。


血液の量の問題と血液の流れに効果が期待できる「シナモン」

f:id:lebois_medi02:20170905004858g:plain

肉桂・桂皮とも呼ばれ、漢方に用いられたり、スパイスやお菓子作り、アロマオイルにもよく使われています。

薬用として、シナモンには消化促進作用、抗菌作用、発汗作用、健胃作用、血行を改善して冷え性や肩こりを解消する効果があります。また、血糖値や中性脂肪コレステロール値低下など、新たな作用が注目されています。

栄養素は、ミネラルが豊富に含まれており、特にカルシウム、鉄分、マンガンが多い食品のため女性に最適です。加えて、第七の栄養素と言われる「ファイトケミカル(植物由来の化学成分)」の一種である「シンナムアルデヒド(桂皮アルデヒド)」が含まれ、毛細血管の老化防止への効果があります。毛細血管の減少によるしみ、シワ、たるみの解消という女性にはうれしい効果が期待されているスパイスです。冷えを克服すれば、いろんな不調は改善の方向へと向かうとわたくしは考えています。その点からも、シナモンは、活用すべきスパイスのひとつだと思います。
東洋医学的に言うところの、血液の量の問題(血虚)と血液の流れの問題(瘀血)の改善に、効果が期待できますね。

 


シナモンの種類・産地で分かれる「セイロン」と「カシア」 

f:id:lebois_medi02:20170905004930j:plain

シナモンの原料植物には、大きく分けると「セイロンシナモン」と「カシア」という2種類があるということは、あまり知られていないのではないでしょうか。
シナモンといえばその香りが特徴的ですが、セイロンシナモン、カシアのどちらとも樹皮が香辛料として利用され、セイロンシナモンの方が上品な香りで高級とされています。

 

f:id:lebois_medi02:20170905005022j:plain


アーユルヴェーダを学んだスリランカのキャンディの森で、沢山の植物に出会いました。ゴツゴーラ、ココナツ、カカオ、胡椒、うこん、トリファラの三果 アラル・ブッル・ネッリ、・・・そして、シナモンの木もありました。
そう、スリランカは、「セイロンシナモン」の産地だったのです。

アーユルヴェーダでは、口腔衛生にとても気を遣いますが、スリランカは、本当にスパイスが生活に根差していて、日常使いとして、歯磨き粉にスパイスが加えられていることも印象的でした。シナモンは、口腔衛生にも効果があるとされますが、これにもしっかりとシナモンも調合されています。歯磨きペーストは、こんなに黄色くて大丈夫だろうか? と思うほどの、ターメリック色。でも大丈夫、安心してください、黄色くはなりません(笑)。
また、スリランカ流の飲む風邪薬・サマハンにも、スパイスがいっぱい。(14種)
日本でいえば、市販されている「葛根湯」や「生姜湯」のように、スリランカ流のお湯にといていただくお薬です。

f:id:lebois_medi02:20170905012050j:plain

 

ちょっと注意したいこと

シナモンは、古くから香辛料としてさまざまな料理や菓子などに使われていますが、最近はサプリメントなど健康食品としての利用も見られます。
近年、シナモンの香りの成分の1つであるクマリンという物質を過剰に摂取することにより、肝障害が誘発されることがわかってきました。一般的な食生活の中で料理などに使われるシナモンの量は少ないため心配はいりませんが、通常の食品よりも成分を濃縮しているサプリメントなどの場合には、過剰に摂取する可能性があるので、注意が必要です。
(以下、東京都健康安全研究センター研究年報 第59号 別刷より抜粋です)

平成18年都民健康・栄養調査結果で、「香辛料・その他」の1日当たりの摂取量は0.3グラム、「菓子類」は28.4グラムであることから、一般的な食生活ではシナモンによる健康影響はないと考えられます。

サプリメントでは、すべての製品で表示されていた一日の摂取目安量は2カプセルであり、その範囲ではクマリンの耐容一日摂取量を超えませんでしたが、4~5カプセルを摂取すると耐容一日摂取量を超えてしまいます。ということからも、お食事でとり行けていくことが安全策だと思います。

事実、東京都では平成19年度に、市販されているシナモンスパイスやシナモンを含む食品のクマリン含有量について、実態調査の結果、平均値で、スパイスではクマリンをセイロンシナモンから13.7ppm、カシアから3257.5ppm検出しました。
(1ppmとは、1キログラムの食品から1ミリグラムのクマリンを検出すること)。
また、シナモンを含む菓子では19.7ppm、サプリメントでは2640.0ppmのクマリンを検出しました。スパイスのTDI※相当量はセイロンで平均360gカシアで平均1.5 g。これらのことから香辛料として通常の食事をする限りでは、TDIを超えることはないと考えられます。※1日の摂取量(TDI)

f:id:lebois_medi02:20170905005755p:plain

セイロンシナモンは優秀ですね。

 

調味料としての活用

f:id:lebois_medi02:20170905010045j:plain

f:id:lebois_medi02:20170905010056j:plain

↑ 先生にお借りした写真 上: タジンミックス 下: アリッサ 
 
昨日開催したセミナーでは、「タジンのミックス」「アリッサ」を作りました。
みなさん口々におっしゃいましたが、鶏肉を煮込んでつくるタジン、味の深見が違いました。最近、大人気のアリッサ。随分前から、自己流でつくられていたという際物の方もお見えでしたが、手作りは私は初めてで、そのおいしさには、驚きました。
昨夜煮込んだカレーに、今夜は、アリッサを加えながらいただきました。
これはおいしい!! おいしくて、からだにもいいのですから、置き換えフィトテラピーの活用術としては、大成功です
 

シナモンは生薬

漢方薬にも調合されているのをご存知の方も少なくないと思うが、有名どころでは、以下ふたつです。

気楽に使える
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) これは、薬局でも購入できます。

f:id:lebois_medi02:20170905010516j:plain

f:id:lebois_medi02:20170905011605j:plain


スペシヤルな生薬
十全大浦湯

f:id:lebois_medi02:20170905011459j:plain

f:id:lebois_medi02:20170905011801j:plain


四君子(人参、白朮、茯苓、甘草、)と、四物湯(当帰、芍薬、川芎、地黄)の合方である八珍湯に、さらに、桂皮、黄耆を、加えたなんと贅沢な「十味」の処方です。「四物湯(しもつとう)」は血虚を補い、血行を良くして血燥を潤し、心と肝の機能を盛んにします。「四君子湯(しくんしとう)」は気虚を補い、脾と胃の力をつけ、消化機能を亢進して、血を増やし肌肉を充実させます。「桂皮(シナモン)」は陽気を通じて血行を良くし四物湯・四君子湯の補う力をさらに高め、同時に表の寒を散じ、冷えを取り去ります。黄耆は体表部の気を補うと同時に、表を固めて止汗しその気を体外に泄らさず、余分な肌肉の水滞を尿として取り除きます。

ご説明すると長くなりますので、生薬についは、理論も含め、また別の機会に取り上げたいと思います。

 

最後に
9月になって、肌寒さも感じられるようになりました。お腹に手を当ててみてください。夏の暑さでこたえた身体。冷房で実は冷えているそんなこともあろうかと思います。ぜひ、負担にならない簡単な置き換えフィトテラピーで、健康な毎日を送っていただきますように。

最後に、10月・次回のフィトテラピー実践講座は、「季節のハーブのおたより講座」ラベンダー編とローズ編。いよいよ、南仏のお土産話しも加えた2本立てで開催です。ぜひ、いらしてくださいね。

kimikimiでした。