les feuilles

ルボア卒業生AMPP認定マスター/メディカル・フィトテラピストによるフィトテラピーな毎日

『Life is better』

先日、気持ちの良い晴れ空の下に洗濯物を干し終え、コーヒー片手にダイニングテーブルに腰掛けると、その瞬間TVに映し出されたのは、パリのモンマルトル界隈、メトロ12号線のLamarck- Caulaincourt駅。思わず、わあ!懐かしい!と声を上げてしまった。

f:id:phyto-mmym:20160311230229j:plain

私が空港以外ではじめてパリの空気を吸ったモンマルトル。その空気が、故郷・渋谷の明け方のそれとほぼ同じ、埃と生ごみの臭いだったことに衝撃を受けたのを思い出す(タクシーから遠巻きに観た朝日に照らされたパリ市内はバラ色で、さらに頭の中に作り上げていたパリは、香水と焼きたてバゲットとバラの香りだったので、なおさら衝撃度は増した)。


ただ、数年後に再訪したときは、かつて妄想したパリが現実化し、本当に焼きたてバゲットと花の香りがした(実力派の美味しいパン屋さんが増え、春の花々が芳しかった)。パリで一番愛着がある場所はモンマルトルかもしれない。ひさびさに足を運んでみたくなる。

f:id:phyto-mmym:20160311230255j:plain


2月の記事に書いた通り、パリで作った香水は冷夏の影響を存分に閉じ込めてしまったけれど、今ならきっと、5月の晴れた日にモンマルトル広場から眺めたパリをモチーフにすると思う。

『Face to Face』 - les feuilles

Darwin》を嗅いではじめに思い出したのはパリで過ごした自室と曇天で肌寒い街だったのに、TV越しに光あふれるモンマルトルの小路や階段を目にしたら、一気に違った記憶がよみがえってきた。

Life Is Better (feat. Norah Jones)

Life Is Better (feat. Norah Jones)

  • Qティップ
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250

そして同時に、この歌が頭で鳴り出した。リリースからはだいぶ時間が経つけれど、この曲を初めて聴いたのはパリだった。


どうやら私は、シダーウッドの香りに、Norah Jonesのようなハスキーな歌声を感じるらしい。そこにこの、コラボレーションならではの、普段の彼女とは一味違う、浮遊感と透明度。そして、秋風を感じた『Face to Face』とは違って、初夏の風がふわりと耳元を通り抜けていくような感覚…


本来の《Darwin》の元となったイメージは、船旅。「甲板」から風を感じる。未知の大陸へ向かう高揚感。一方、モンマルトルはその名の通り「丘」だけれど、サクレ=クール寺院前の広場に立てば、気持ちの良い風が全身に感じられる。そういえば、《625》を作ったとき、学校に提出した香りのイメージ写真は、京都の「清水の舞台」だった。

f:id:phyto-mmym:20160311230325j:plain

《625》のイメージの核は、シダーウッドと、光、高台から吹き抜ける風、揺れる木々と鮮やかな花々。本当は、そういう作品が作りたかったのね、私。


パリに限ったことではなく。こころのありようで街も人も変わる。じぶんさえ変われば、世界は全く違ったものになる。何かの広告の謳い文句のようだけれど、体感してみると、それは本当。パリにいても渋谷にいても、どこか灰色で靄がかかったように世の中が見えていたのは、私がずっとそういうこころのありようだったから。ぬるま湯につかっていた、という表現よりも、目をひそめてよのなかをわざとはっきり見えないように自分で調節していたような感じ。


そんな私も、震災を経て、変化に身を投じることを選択し、雨の日でも光や色を感じるようになった。人生ってなかなか良いものだ。

f:id:phyto-mmym:20160312005404j:plain

さらに、意識的に身体に触れる術を得て、人もじぶんも、生きている限り刻々と変化していることを肌から知る。同じ香りを嗅いで、思うこと、思い出すことも、受け手が変われば変わるのだ。諸行無常


もしこの話を読んだあなたに、すぐ思い出せる香りがあるとしたら。その香りは、出逢った当時と同じ印象を保っているだろうか。それとも、そのときとは全く違う感情を抱いただろうか。

f:id:phyto-mmym:20160311230624j:plain